顧客視点の重要性!企業の持続的な成長に必要不可欠な考え方

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

企業が競争力を維持し、持続的な成長を実現するためには、顧客視点で物事を考えることが必要不可欠です。顧客の立場に立って商品やサービスを評価し、改善することで、顧客満足度やロイヤルティを高めることができ、結果としてビジネスをさらに飛躍させることができます。

そこでこの記事では、顧客視点の重要性やその具体的な手法について解説いたします。ペルソナの設計やカスタマージャーニーの作成、4C分析、NPSの活用など、実践的なアプローチについてもご紹介いたします。

目次

顧客視点とは何か

顧客視点の意味

顧客視点とは、顧客の立場に立って自社の製品やサービスを評価し、改善する視点を持つことです。
これは単なるフィードバック収集にとどまらず、顧客が実際に何を求め、どのように感じているかを深く理解することを指します。顧客視点を持つことで、企業は顧客の真のニーズや期待に応えることができるようになります。

顧客視点を実践するためには、まず顧客の行動データを収集・分析することが重要です。
例えば、ウェブサイトのアクセスログや購買履歴を詳細に調査することで、顧客がどのような商品に興味を持ち、どのような購買行動をとっているのかを把握できます。
これにより、顧客が感じている潜在的なニーズや不満を見つけ出し、それに対する解決策を考案することが可能になります。

さらに、顧客との直接対話を行うことも大切です。
以前の記事でもお伝えしたような「顧客インタビュー調査」などを通じて、顧客の意見や感想を直接聞くことで、より具体的なニーズや期待を理解することができます。

企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、顧客視点を常に意識し、顧客のニーズに応えるための努力を怠らないことが非常に重要です。これにより、企業は顧客に選ばれ続ける存在となり、市場での優位性を確立することができるでしょう。

「お客様の声」との違い

顧客視点と「お客様の声」はしばしば混同されがちですが、異なる概念であると捉えるようにしましょう。

「お客様の声」とは、顧客が製品やサービスに対して抱いた感想や不満を直接的に言語化したものです。アンケートやインタビュー、口コミなどを通じて収集され、主に企業が製品やサービスの改善点を把握するために活用されます。
しかし、「お客様の声」は必ずしも顧客の真のニーズを反映しているわけではありません。多くの場合、顧客は自分の本当のニーズや不満を明確に言葉にできないことがあります。たとえば、顧客が「価格が高い」と感じている場合、その背後には「価値に見合ったサービスが提供されていない」といった深層的な理由が隠れているかもしれません。このような潜在的なニーズや不満は、「お客様の声」だけでは捉えきれないことが多いのです。

一方、顧客視点とは、顧客の立場に立って製品やサービスを観察、評価し、改善するための視点を持つことです。顧客視点を取り入れることで、顧客が言葉にできない潜在的なニーズや問題点を見つけ出し、それに対する解決策を考案することができます。前述の通り、「顧客の行動データを収集・分析する」「顧客との直接対話を行う」などの活動を通じて、顧客を深く理解し、想像することが何よりも大切になってきます。

なぜ顧客視点が必要なのか

企業視点に偏らない判断ができる

顧客視点で物事を考えることで、企業視点に偏らない判断をするができるようになります。

企業は、商品やサービスの開発において、しばしば自社の利益や目標数値に重きを置きがちです。その結果、企業視点で物事を判断し、顧客の視点を見失ってしまうことがあります。これでは、顧客の本当のニーズを理解し、満足させることは難しくなってしまいます。
例えば、企業が新製品を開発する際に、自社の技術やコスト削減、製造効率の向上ばかりを優先に考えたとします。その結果、顧客にとっては使い勝手が悪い商品が生まれてしまうかもしれません。顧客の視点に立って考えると、使いやすさやアフターサービスなど、顧客が実際に重視する要素を最も大切に考えて、顧客が本当に価値を感じる商品やサービスを提供できるようになります。

企業視点に偏らないためには、社内の各部門が連携して顧客視点を共有し、全体として顧客中心のアプローチを取ることが求められます。経営層、製品開発部門、マーケティング部門、営業部門、カスタマーサービス部門などが一体となって顧客視点を取り入れることで、企業全体が顧客のニーズに敏感になり、迅速に対応することができるのです。これにより、企業は顧客満足度を高め、長期的な顧客ロイヤルティを獲得することができます。

一般論や常識にとらわれない発想ができる

顧客視点を持つことで、一般論や常識にとらわれない柔軟な発想ができるようになります。

企業は、市場や業界の一般的なルールや通念に従って商品やサービスを開発、提供してしまうことがしばしばあります。
例えば、健康食品を販売する企業が、「健康食品を求める人は、健康にしっかりと気を遣う人に決まっている」というように決めつけてターゲット顧客を設定してしまうようなケースです。しかし、顧客視点で考えると、実際には「健康には無頓着だが、手軽に簡単に健康的な選択をしたいだけ」と考える人々が多いことに気付くかもしれません。このような顧客の潜在的なニーズを掘り下げることで、新たな市場を開拓し、競合他社との差別化を図ることが可能になります。
セブンイレブンの「金の食パン」などが、この例として挙げられます。「コンビニでは安いものをサッと買いたいだけ」という通念を排除して、あえて高価格の食パンを提供し「少しいいパンを買いたい」という顧客の潜在的なニーズを捉え、成功を収めました。一般論や通念にとらわれずに顧客視点で戦略を立てることが大切であるという例の一つです。競争の激しい市場で企業として成功するためには、柔軟な思考と顧客の声に耳を傾ける姿勢を持ち続けることが重要です。

顧客視点を活かすためのフレームワーク

ペルソナを設計する

ペルソナの設計は、顧客視点マーケティングの基本となるプロセスです。

ペルソナとは、製品やサービスのターゲットとなる理想的な顧客像を具体的に描いたものです。これにより、企業はマーケティング戦略を効果的に立てることができます。ペルソナを設計する際には、顧客の年齢、性別、職業、収入、ライフスタイル、購買動機など、詳細な情報を盛り込むことが求められます。

ペルソナを設計することで、企業は顧客のニーズや課題を想像・理解し、その解決策を考案することができます。例えば、ある健康食品を販売する企業が、主婦をターゲットにしたペルソナを設計した場合、その主婦が抱える健康への関心や、普段の生活での忙しさ、時間の無さなどを考慮して、商品の開発やマーケティング戦略を策定することができます。これにより、顧客にとってより魅力的な商品を提供することができ、競争力を高めることができます。

以前の記事でもお伝えしたように、想像力を膨らませて、お客様のことを明確にイメージするようにしましょう。

カスタマージャーニーを作成する

以前の記事でもお伝えした通り、カスタマージャーニーとは、お客様が商品やサービスを購入するまでの過程を、そのお客様の視点から明確に捉えたものです。カスタマージャーニーを想像することで、お客様が自社の商品やサービスを知ってから購買に至るまでに経験する一連の流れや感情を理解し、可視化することができます。

カスタマージャーニーを作成するためには、まず顧客のペルソナを明確にし、そのペルソナがどのような経路をたどるかを考えます。顧客が最初に商品やサービスを認知する段階から、実際に購入し、その後のアフターサポートに至るまでの各タッチポイントを洗い出します。例えば、ウェブサイト訪問、口コミ、広告、店舗訪問、購入後のフォローアップメールなど、すべての接点をリストアップし、それぞれの段階で顧客が何を感じ、何を期待しているのかを考慮します。

カスタマージャーニーを詳細に作成することで、顧客がどの段階でつまずきやすいか、どの段階で最も満足度が高いかを想像することができます。これにより、顧客体験を向上させるための具体的な施策を講じることが可能になります。例えば、購入前の情報提供が不十分であれば、ウェブサイトのコンテンツを充実させる、購入後のフォローアップが不足している場合は、顧客サポートを強化するなどの対策を考えることなどができるようになります。

4C分析を活用する

4C分析は、顧客視点を取り入れたマーケティング戦略を立てるために有用なフレームワークの一つです。

4Cとは、Customer Value(顧客価値)、Cost(顧客のコスト)、Convenience(顧客にとっての利便性)、Communication(顧客とのコミュニケーション)の4つの要素から成り立っています。
まず、Customer Valueは、製品やサービスが顧客にどのような価値を提供しているかを評価します。これは単なる機能や価格だけではなく、顧客がどのような感情や体験を得られるかを含んで考えます。例えば、スターバックスは単にコーヒーを売るだけでなく、居心地の良い空間を提供することで顧客価値を高めていると言えるでしょう。
次に、Costは、顧客が製品やサービスを購入する際に負担するコストを評価します。ここでのコストは金銭的なものだけでなく、時間や労力も含まれます。顧客にとってコストが高すぎると感じる場合、それを低減する方法を検討する必要があります。例えば、オンラインショップでの簡単な購入プロセスや迅速な配送サービスは、「手間」という顧客のコストを低減する効果的な方法の一つです。
Convenienceは、製品やサービスがどれだけ利用しやすいかを評価します。顧客が製品を手に入れるまでのプロセスや、その後の使用体験がスムーズであることが重要です。例えば、ECサイトなどで検索機能を充実させるような施策は、顧客に高い利便性を提供するための策の一つであると言えます。
最後に、Communicationは、企業と顧客の間での情報のやり取りのことです。双方向のコミュニケーションが重要であり、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、それに基づいて改善を行うことが企業には求められます。SNSやカスタマーサポートを通じた顧客との継続的なコミュニケーションなどがその一例です。

4C分析を活用することで、企業は顧客の視点からマーケティング戦略を見直し、顧客にとって真の価値を提供しやすくなります。

顧客視点の評価・計測方法

NPS(ネットプロモータースコア)の活用

NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客視点を評価・計測するためのシンプルかつ強力な指標の一つです。
顧客が企業の製品やサービスをどれだけ他者に薦めたいかを尋ねる一つの質問に基づいて算出されます。0から10までの11段階で評価し、その結果をもとに顧客を推奨者、中立者、批判者の3つのカテゴリーに分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値で表され、この数値が高いほど顧客ロイヤルティが高いことを示します。

NPSの最大の利点は、そのシンプルさと収益との高い相関性にあります。顧客ロイヤルティが高い企業は、顧客の継続利用率やリピート購入率が高く、結果として収益の安定化や向上につながると言われています。NPSを活用することで、企業は顧客の満足度やロイヤルティを定量的に把握し、改善のための具体的なアクションを導き出すことができます。
NPSを継続的に追跡することで、企業は顧客満足度のトレンドを把握し、長期的な戦略を立てることができます。例えば、新製品のリリース後にNPSがどのように変動するかを監視することで、その製品の市場受容性を評価できます。NPSという指標を効果的に活用することで、企業は顧客満足度とロイヤルティを向上させ、競争力を強化することができます。

行動観察調査(エスノグラフィー調査)

行動観察調査(エスノグラフィー調査)は、顧客のニーズを把握し、顧客視点での商品が設計できているかを計測するために有効な手法の一つです。この調査方法は、顧客の日常生活や自然な行動を観察し、顧客がどのように商品やサービスを利用しているかを理解することを目的としています。アンケートやインタビューでは捉えきれない、顧客の無意識の行動や感情を見つけ出すことができます。

具体的な手法には、現地での直接観察やビデオ録画、顧客との対話を通じた詳細な記録などがあります。例えば、小売店で顧客が店内をどのように歩き回り、どの棚に興味を示し、どのような商品を手に取るかなどを観察し、商品の配置や店内レイアウトが顧客視点になっているかを検証するようなイメージです。あるいは、家庭内での料理の様子を観察し、調理の際に自社のキッチンツールが便利に使ってもらえているかなどを把握するような方法です。

行動観察調査の強みは、顧客が自身でも気づいていない問題点を発見できる点にあります。商品が使いにくいと感じている顧客は、その不満を明確に言葉にできないことがあります。しかし、観察を通じて、顧客が特定の操作に時間をかけている様子や、困惑している表情を捉えることで、その商品の改良点を見つけ出すことができます。
行動観察調査はリソースと時間を要するため、中小企業にとってはなかなか実施が難しい場合もありますが、顧客の行動を深く理解することで、より的確な商品改善や新製品開発が可能となり、競争力を高めるためには有用な調査方法の一つです。

顧客視点を組織に取り入れるためのポイント

一貫したCXの提供

一貫した顧客体験(CX)の提供を意識することは、企業が顧客視点を高めるためには重要なポイントです。

顧客体験(CX)とは、顧客が企業と接触するすべてのタッチポイントにおいて感じる印象や感情のことを指します。これには、ウェブサイトの使いやすさ、購入プロセスの快適さ、カスタマーサービスの質などが含まれます。一貫したCXを提供することで、顧客は企業に対して信頼感や安心感を抱きやすくなり、結果として長期的なロイヤルティの向上につながります。

一貫したCXを提供するためには、まず企業全体で顧客視点を共有し、顧客体験を重視する文化を醸成することが必要不可欠です。すべての部門が連携し、顧客に対するアプローチを統一することが重要です。例えば、マーケティング部門が顧客に対してアピールしている内容と、カスタマーサービス部門の提供しているサービスがチグハグになっていると、顧客は当然失望してしまいます。各部門が一貫したメッセージとサービスを提供することで、顧客は企業に対するポジティブな印象を持ち続けることができます。

組織体制、基盤の整備

顧客視点での企業運営ができるようになるためには組織体制、基盤の整備も重要です。

全社員が顧客視点の重要性を理解し、それを日常業務に取り入れる文化を醸成することが大切です。トップダウンのアプローチで、経営層が顧客中心の理念を常に強調し、それが全社に浸透するよう努めることも必要でしょう。経営陣のリーダーシップが、顧客視点を組織のDNAに組み込む鍵の一つになります。

また、部門間の壁を取り払い、情報共有を促進する体制も求められます。商品開発、マーケティング、営業、カスタマーサポートなどの各部門が協力し、顧客の声やデータを共有することが大切です。

さらに、顧客関係管理(CRM)システムなどの、顧客データ管理の基盤となるITツールの整備も大切になってきます。顧客の購買履歴や情報を一元管理することで、全社的に顧客の状況を把握しやすくなります。

PDCAサイクルを回す文化を浸透させる

PDCAサイクルを回す文化を浸透させることは、顧客視点を取り入れた組織運営を行うためには重要なポイントです。

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのステップを繰り返し行うプロセスを指します。
まず、Planの段階では、顧客の声や市場データを基に具体的な目標と戦略を設定します。顧客視点を重視した計画を立て、具体的な施策を立案にします。次に、Doの段階では、計画に基づいて実際の施策を実行します。その後、Checkの段階で、実行した施策の結果を評価します。顧客からのフィードバックや販売データを収集・分析し、計画がどの程度達成されたかを確認します。この評価プロセスは、顧客の反応や市場の変化を把握するために不可欠です。最後に、Actの段階で、評価結果に基づいてさらなる改善策を策定し、次のサイクルに反映させます。

このようなPDCAサイクルを回す文化が社内に浸透することで、「今のままで良いんだ」という企業視点の一方的な考えに陥ることなく、顧客視点を常に維持することができるようになります。全社員がこの意識を強く持ち、日常業務に取り入れることで、企業全体が顧客中心の文化を築くことができるようになるでしょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか?
本記事でご紹介したペルソナ設計、カスタマージャーニーの作成、4C分析なども活用しながら、顧客視点で考えることを意識してみてください。市場の変化に柔軟に対応し、常に顧客の声に耳を傾ける姿勢を持つことが、成功への鍵です。顧客の真のニーズを理解し、それに応える努力を続けることで、競争力を強化し、きっと持続的な成長を遂げることができるはずです!

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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